プログラミング・スキルアップ 2025年12月8日

【2025年最新】PyTorch vs TensorFlow徹底比較初心者はどっちから始めるべき?

機械学習を始めようとすると必ず直面する「PyTorchとTensorFlow、どっちを選べばいい?」という疑問。2025年現在、両フレームワークは大きく進化し、それぞれの強みがより明確になっています。この記事では、7つの観点から徹底比較し、あなたに最適なフレームワークを見つける手助けをします。

1. PyTorchとTensorFlowとは?

PyTorchTensorFlowは、機械学習・ディープラーニングの開発に使われる2大フレームワークです。どちらもオープンソースで無料で使え、世界中の研究者やエンジニアに利用されています。

Py

PyTorch

Meta AI(旧Facebook)開発

  • ・2016年リリース
  • ・動的計算グラフ(Define-by-Run)
  • ・Pythonらしい直感的な記述
  • ・研究・学術分野で圧倒的シェア
TF

TensorFlow

Google開発

  • ・2015年リリース
  • ・静的計算グラフ(TF2.0で動的も対応)
  • ・Kerasによる高レベルAPI
  • ・本番運用・エンタープライズで強み

なぜこの2つが比較されるのか?

どちらも「ニューラルネットワークを構築・学習・デプロイする」という同じ目的を持ちながら、設計思想やエコシステムが異なります。そのため「どっちを選ぶべきか」は機械学習を始める人の永遠の悩みとなっています。

2. 【2025年最新】市場シェアと採用状況

2025年現在、PyTorchとTensorFlowの勢力図は「用途によって住み分け」という状況になっています。

2025年 市場シェア・採用状況

研究・学術分野(論文)

85% PyTorch

本番環境シェア

55% PyTorch

企業全体の採用率

38% TensorFlow

GitHubスター数

PyTorch: 85k+ / TF: 186k+

トレンドの変化

2020年頃までは「研究ならPyTorch、本番ならTensorFlow」という明確な住み分けがありましたが、2025年現在はその境界が曖昧になりつつあります。PyTorchも本番運用ツールを強化し、TensorFlowも研究向け機能を充実させています。

指標 PyTorch TensorFlow
論文での使用率 85% 15%
企業全体の採用率 23% 38%
スタートアップ人気 高い 中程度
大企業での採用 増加中 安定

3. 7つの観点で徹底比較

1 学習のしやすさ

PyTorch - 優勢

Pythonの文法に近く、直感的に書ける。「define-by-run」方式で、コードを書きながら動作を確認できる。

TensorFlow

Keras APIを使えば簡潔に書けるが、低レベルAPIは学習コストが高い。TF2.0で改善されたものの、まだ独特の記法が残る。

2 デバッグのしやすさ

PyTorch - 優勢

通常のPythonデバッガ(pdb、IDE)がそのまま使える。エラーメッセージも分かりやすく、問題の特定が容易。

TensorFlow

Eager Execution(即時実行)で改善されたが、グラフモードでのデバッグは依然として難しい場合がある。

3 カスタマイズ性

PyTorch - 優勢

カスタムレイヤーや独自アーキテクチャの実装が直感的。研究で新しいモデルを試すのに最適。

TensorFlow

Subclassing APIでカスタマイズ可能だが、PyTorchほど自由度は高くない。標準的な構成なら十分。

4 本番デプロイ

PyTorch

TorchServe、ONNX経由でのデプロイが可能。改善されているが、TensorFlowほどの成熟度はない。

TensorFlow - 優勢

TensorFlow Serving、TFX(TensorFlow Extended)など、本番運用向けツールが充実。実績も豊富。

5 モバイル・エッジ対応

PyTorch

PyTorch Mobileあり。ExecuTorchで改善中だが、TensorFlow Liteほどの成熟度はまだない。

TensorFlow - 優勢

TensorFlow Lite(TFLite)が業界標準。Android/iOS/IoTデバイスへの最適化に強い。

6 コミュニティ・エコシステム

PyTorch

Hugging Face、fast.aiなど人気ライブラリがPyTorchベース。最新論文の実装がほぼPyTorch。

TensorFlow

TensorFlow Hub、TFXなど公式エコシステムが充実。Google製品との連携が強み。

両者ともコミュニティは活発で、引き分け

7 企業での採用状況

PyTorchを採用

Meta、Microsoft、Tesla、OpenAI、Uber、Airbnb

TensorFlowを採用

Google、Intel、Twitter、Coca-Cola、GE Healthcare

比較項目 PyTorch TensorFlow
学習のしやすさ
デバッグ
カスタマイズ性
本番デプロイ
モバイル対応
コミュニティ
研究での人気

4. 初心者はどっちから始めるべき?

結論: 初心者にはPyTorchがおすすめ

「まず機械学習に触れてみたい」「論文のモデルを動かしてみたい」という初学者には、PyTorchから始めるのが最短ルートです。

PyTorchをおすすめする3つの理由

1. Pythonの文法に近い

NumPyを使ったことがあれば、PyTorchのテンソル操作は直感的に理解できます。

2. デバッグが簡単

通常のPythonコードと同じようにprint文やデバッガで確認でき、エラーの原因を特定しやすい。

3. 学習リソースが豊富

最新の論文実装、Hugging Faceのモデル、チュートリアルの多くがPyTorchベース。

TensorFlowを選ぶべきケース

  • モバイルアプリ開発が目的(TensorFlow Liteが強い)
  • Google Cloudをメインで使う予定
  • 既存のTensorFlowプロジェクトに参加する
  • Kerasの簡潔さを好む

両方学ぶ必要がある?

まずは片方を深く理解することが重要です。基礎概念(テンソル、勾配計算、最適化)は共通なので、片方をマスターすればもう片方への移行は比較的容易です。

5. 新しい選択肢: Keras 3とは?

2023年末にリリースされたKeras 3は、「PyTorch vs TensorFlow」の議論を終わらせる可能性を秘めた新しい選択肢です。

Keras 3の特徴

  • 1

    マルチバックエンド対応

    TensorFlow、PyTorch、JAXの3つをバックエンドとして選択可能

  • 2

    コード変更不要

    設定の切り替えだけで、同じコードを異なるバックエンドで実行可能

  • 3

    高レベルAPI

    シンプルで読みやすいコードで、複雑なモデルも構築可能

# Keras 3でバックエンドを切り替える例
import os
os.environ["KERAS_BACKEND"] = "torch" # または "tensorflow", "jax"
import keras

Keras 3は選ぶべき?

Keras 3は「どのフレームワークを選ぶか」という悩みを解消する可能性がありますが、まだ発展途上です。初心者は まずPyTorchかTensorFlowの基礎を学び、その後Keras 3を試すのがおすすめです。

6. 目的別おすすめフレームワーク

研究・論文実装

おすすめ: PyTorch

最新論文の実装がほぼPyTorch。Hugging Face、fast.aiなどのライブラリもPyTorchベース。

本番運用・サービス開発

おすすめ: TensorFlow

TensorFlow Serving、TFXなど本番運用ツールが充実。大規模システムでの実績が豊富。

モバイルアプリ

おすすめ: TensorFlow Lite

Android/iOSでの機械学習にはTFLiteが事実上の標準。軽量化・最適化ツールも充実。

学習・入門

おすすめ: PyTorch

直感的な記法で学習しやすい。デバッグも容易で、挫折しにくい。

自然言語処理(NLP)

おすすめ: PyTorch

Hugging Face TransformersがPyTorchファースト。GPT、BERTなどの最新モデルも主にPyTorch。

7. よくある質問(FAQ)

Q. PyTorchとTensorFlowはどちらが人気ですか?

2025年現在、研究・学術分野ではPyTorchが圧倒的で、論文の約85%がPyTorchを使用しています。一方、企業での全体的な採用率ではTensorFlowがリードしており、市場シェアの約38%を占めています。用途によって人気が分かれています。

Q. 機械学習初心者はPyTorchとTensorFlowどっちから始めるべき?

初心者にはPyTorchがおすすめです。Pythonの文法に近く直感的に書けること、デバッグがしやすいこと、最新の論文実装がPyTorchで公開されることが多いことが理由です。まずPyTorchで基礎を学び、必要に応じてTensorFlowを学ぶのが効率的です。

Q. PyTorchとTensorFlowの両方を学ぶ必要がありますか?

キャリア目標によります。研究者を目指すならPyTorchだけでも十分です。企業でMLエンジニアとして働くなら、両方の基礎を理解しておくと有利です。ただし、Keras 3の登場により、1つのコードで複数のバックエンドを使い分けられるようになってきています。

Q. 転職・就職に有利なのはどちらですか?

求人数では両方同程度ですが、スタートアップや研究職ではPyTorch、大企業の本番システムではTensorFlowが求められることが多いです。どちらか一方を深く理解していれば、もう一方への移行は比較的容易です。

8. まとめ

この記事のポイント

  • 1. 研究分野ではPyTorchが85%のシェア、企業全体ではTensorFlowが38%
  • 2. 初心者にはPyTorchがおすすめ(直感的、デバッグしやすい)
  • 3. 本番運用・モバイルではTensorFlowに強みあり
  • 4. Keras 3が両者の垣根を下げる可能性
  • 5. まずは片方を深く学ぶことが重要

「PyTorch vs TensorFlow」の結論は、「どちらが優れているか」ではなく「あなたの目的に合っているか」です。初心者ならまずPyTorchから始め、必要に応じてTensorFlowを学ぶのが効率的なルートです。

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参考・出典