AIニュース・トレンド 2025年12月9日

【2025年最新】生成AIと著作権問題Perplexity訴訟から学ぶ法的リスク

2025年、日本の大手新聞社3社がAI検索サービス「Perplexity」を著作権侵害で提訴し、総額66億円の損害賠償を請求しました。生成AIの利用が急速に広がる中、著作権をめぐる法的リスクは企業・クリエイターにとって無視できない問題となっています。この記事では、最新の訴訟事例と著作権法の解説、そして実務上の対策を詳しく解説します。

生成AIと著作権問題とは?

生成AI(Generative AI)の急速な普及に伴い、著作権をめぐる法的問題が世界中で注目されています。ChatGPT、Claude、Geminiなどの大規模言語モデル(LLM)や、Midjourney、Stable Diffusionなどの画像生成AIは、膨大な量のデータを学習して出力を生成します。

この「学習」と「生成」の両段階で、著作権法上の問題が発生する可能性があります。

生成AIと著作権の2つの論点

  • 1. 学習段階:AIが著作物を学習データとして収集・複製することの適法性
  • 2. 生成段階:AIが出力した内容が既存著作物に類似している場合の侵害リスク

特に2025年は、日本の大手新聞社がAI検索サービスを提訴するなど、生成AIと著作権の問題が具体的な訴訟として顕在化した年となりました。AIを活用するすべての企業・個人にとって、法的リスクの理解は不可欠です。

【2025年】Perplexity訴訟の全貌

2025年、日本の報道機関が米国AI検索サービス「Perplexity」を相次いで提訴しました。この訴訟は、生成AIと著作権をめぐる日本初の大型訴訟として注目されています。

訴訟の経緯

提訴日 原告 請求額
2025年8月7日 読売新聞社 約21.7億円
2025年8月26日 日本経済新聞社 約22億円
2025年8月26日 朝日新聞社 約22億円
合計 約66億円

訴訟の主な争点

1. 大量の記事の無断複製

読売新聞の訴状によると、Perplexityは2025年2月〜6月に約11万9,467本の記事を無断で収集・複製したとされています。

2. robots.txtの無視

各新聞社はrobots.txtでクローラーのアクセスを拒否していたにもかかわらず、Perplexityはこれを無視して記事を収集したと主張しています。

3. ゼロクリックサーチによる営業妨害

Perplexityが記事内容を要約して表示することで、ユーザーが元サイトを訪問しなくなり、広告収入が減少したと訴えています。

4. 誤情報による信用毀損

回答に新聞社名を引用しながら、実際の記事と異なる誤情報を表示し、新聞社の信用を毀損したとも主張しています。

この訴訟の意義

この訴訟の結果は、日本における生成AIと著作権の法的解釈に大きな影響を与えます。特に「robots.txtの法的拘束力」「AI学習データの収集の限界」「要約・引用の許容範囲」について、重要な判例となる可能性があります。

日本の著作権法とAI

日本の著作権法には、AIの学習に関する重要な条文があります。特に30条の447条の5は、AI開発・利用の法的根拠として重要です。

著作権法30条の4(非享受目的利用)

「著作物は、...著作物に表現された思想又は感情を自ら享受し又は他人に享受させることを目的としない場合には、その必要と認められる限度において、いずれの方法によるかを問わず、利用することができる。」

- 著作権法30条の4(抜粋)

この条文により、AIの機械学習のためのデータ収集・複製は原則として適法とされています。AIは著作物の「表現」を楽しむ(享受する)わけではなく、パターンを学習するだけだからです。

ただし、例外あり

30条の4が適用されないケース

  • 著作権者の利益を不当に害する場合
  • 技術的保護手段を回避してデータを収集する場合
  • 享受目的が併存する場合(類似物を生成する目的など)

文化庁ガイドライン(2024年3月)

2024年3月、文化庁は「AIと著作権に関する考え方について」を公表しました。パブリックコメントでは異例の約25,000件の意見が寄せられ、社会的関心の高さを示しています。

文化庁ガイドラインの主なポイント

  • robots.txtを回避してのデータ収集は「不当に害する」可能性あり
  • 特定の著作物を模倣する目的での学習は30条の4の対象外
  • 生成物が既存著作物に類似していれば、利用者も侵害責任を負う可能性

企業・クリエイターが知るべき5つのリスク

生成AIを活用する際、以下の5つのリスクを理解しておく必要があります。

1

出力物の著作権侵害リスク

生成AIの出力が既存の著作物に類似している場合、利用者が著作権侵害の責任を負う可能性があります。「AIが生成したから」という言い訳は通用しません。

2

商標権・肖像権の侵害

著作権だけでなく、ブランドロゴ(商標権)や有名人の顔(肖像権・パブリシティ権)が出力に含まれる場合も問題となります。

3

入力データの機密漏洩

プロンプトに機密情報を入力すると、AIの学習データに取り込まれ、他のユーザーへの出力に含まれるリスクがあります。Samsung社の事例が有名です。

4

利用規約違反のリスク

各AIサービスには利用規約があり、商用利用の制限や出力物の権利帰属が定められています。規約違反はアカウント停止や法的責任につながります。

5

生成物の著作権が認められないリスク

AIが自律的に生成したものには著作権は発生しません。自社コンテンツとして保護したい場合、人間による創作的関与が必要です。

AI活用で著作権侵害を避ける方法

リスクを理解した上で、適切な対策を講じることで、安全にAIを活用できます。

企業向け対策

  1. 1
    社内ガイドラインの策定

    AI利用のルール、禁止事項、承認フローを明文化する

  2. 2
    出力物のチェック体制

    類似性チェックツールの導入、法務部門との連携

  3. 3
    エンタープライズプランの利用

    データが学習に使われない契約、知財保護条項の確認

  4. 4
    従業員教育

    著作権リスクの周知、適切な利用方法の研修

クリエイター向け対策

  • 特定のアーティストや作品の「模倣」を指示するプロンプトは避ける
  • 生成物に自分の創作的関与(編集・加工)を加える
  • 商用利用の場合は利用規約を必ず確認する
  • 類似作品がないかリバースイメージ検索でチェック
  • AI生成であることの明示が必要なケースを把握する

海外の動向(米国・EU)

生成AIと著作権の問題は世界共通の課題です。主要地域の動向を把握しておきましょう。

米国の状況

  • - New York Times vs OpenAI:2024年提訴、記事の無断学習を主張
  • - Getty Images vs Stability AI:画像の無断学習で訴訟中
  • - フェアユース:米国著作権法のフェアユース規定の適用が争点
  • - 著作権局の見解:AI単独生成物には著作権なしと判断

EUの状況

  • - AI規制法(AI Act):2024年発効、世界初の包括的AI規制
  • - 透明性義務:学習データの開示が義務化される見込み
  • - オプトアウト権:著作権者がAI学習を拒否する権利を明確化

日本への影響

米国・EUの判例や規制は、日本の法解釈や立法にも影響を与えます。特にグローバルにサービスを展開する企業は、各地域の規制を遵守する必要があります。2025年6月には日本でも「AI新法」が公布され、新たな枠組みが整備されています。

よくある質問(FAQ)

Q. ChatGPTなどの生成AIを使うと著作権侵害になりますか?

生成AIの利用自体は著作権侵害ではありません。ただし、出力された内容が既存の著作物に類似している場合、その利用が侵害となる可能性があります。特に、特定の著作物を模倣する目的での利用は注意が必要です。

Q. AI学習のためのデータ収集は合法ですか?

日本の著作権法30条の4により、非享受目的(AIの学習など)での著作物利用は原則適法です。ただし、robots.txtで拒否されているデータの収集や、著作権者の利益を不当に害する場合は違法となる可能性があります。

Q. 生成AIで作った文章や画像に著作権はありますか?

AIが自律的に生成したものには著作権は発生しません。ただし、人間が創作的な関与(詳細なプロンプト設計、編集・加工など)をした場合、その関与部分について著作権が認められる可能性があります。

Q. Perplexity訴訟で企業が負けたらどうなりますか?

Perplexityが敗訴した場合、AI検索サービス全体に大きな影響があります。robots.txtの遵守が法的義務として明確化され、他のAI企業も同様の訴訟リスクを負う可能性があります。日本の判例として、世界のAI規制に影響を与える可能性もあります。

Q. 企業がAIを導入する際の著作権対策は?

1) 利用するAIサービスの利用規約を確認、2) 出力物の類似性チェック体制の構築、3) 社内ガイドラインの策定、4) 法務部門との連携体制の整備、5) 定期的な法改正情報のアップデートが重要です。

まとめ

この記事のポイント

  • 2025年、読売・日経・朝日がPerplexityを総額66億円で提訴
  • 著作権法30条の4によりAI学習は原則適法だが例外あり
  • robots.txt回避類似物生成目的の学習は違法の可能性
  • 企業は社内ガイドライン策定チェック体制構築が必須
  • AI生成物の著作権は人間の創作的関与がカギ

生成AIの活用は、ビジネスの効率化やクリエイティブの幅を広げる大きな可能性を秘めています。しかし、著作権をはじめとする法的リスクを理解せずに利用すると、思わぬトラブルに発展する可能性があります。

Perplexity訴訟の行方は、日本における生成AIと著作権の法的解釈に大きな影響を与えるでしょう。今後の判例や法改正の動向を注視しながら、適切にAIを活用していくことが重要です。